銅鐸化学成分分析表
出土地 亜鉛 アンチモン 砒素 ニッケル
伝鳥取 79.40 11.40 8.05 0.64 0.08 t 0.43 t
愛知小牧 84.11 10.41 4.13 0.15 0.34 0.37 0.19 0.31
大阪神於 68.96 15.45 5.63
8.32
1.34 0.04
鳥取泊 74.46 14.25 7.65 0.001
0.001 0.14 0.008
徳島麻植牛島 74.18 15.56 8.48 0.38 0.22 t 0.39 0.79
島根中野2号 76.15 15.43 7.25 0.40 0.16 t 0.07 0.54
徳島津峰南方 76.59 17.13 6.13

t 0.09 0.06
兵庫神戸閏賀 86.72 7.57 5.28 0.10 0.15 t
0.12
滋賀鏡山1号 79.78 9.92 9.27 0.15 0.03 0.03 0.14 0.68
滋賀鏡山2号 86.91 7.87 4.14 0.19 0.24 0.04 0.30 0.31
奈良秋篠1号 86.14 6.36 6.63 0.10 0.24 t 0.30 0.23
島根中野1号 83.41 8.33 7.83 0.08 0.10 t 0.06 0.19
三重神戸木の根 83.84 7.62 7.63 0.25 0.17 t 0.18 0.31
香川石田原 82.42 8.60 8.18 0.34 0.11 t 0.11 0.24
徳島坂野大山 83.78 7.68 8.23 0.10 0.15 t 0.14 0.13
兵庫淡路倭文 85.88 3.49 8.89 0.002
0.001 0.16 0.013
徳島西祖谷山 90.30 6.37 3.07



0.26
三重比土東賀柳 87.99 5.66 5.80

0.44
0.12
奈良石上2号 86.49 5.09 8.37



0.04
大阪羽曳野 87.91 4.52 3.38 0.002
0.002 0.08 0.012
静岡芳川(小) 93.29 3.24 2.97 0.25 0.11 t 0.11 0.04
静岡和田1号 90.63 5.22 3.30 0.13 0.16 0.02 0.25 0.29
静岡和田2号 88.15 5.60 5.16 0.35 0.29 0.31 t 0.14
兵庫川西栄根 90.87 4.17 4.27 0.18 0.06 t 0.16 0.30
三重上野千歳 90.94 3.45 5.49
0.11 0.01

福井向笠 86.93 3.86 3.41
0.81
0.04 0.01

参考資料:「銅の考古学」中口裕著
       「銅鐸の研究」梅原末治著

成分分析から、銅鐸の銅、錫、鉛の(%)が、安定していることがわかる。
その中でも三遠、近畿式とよばれるものは、錫、鉛ともに減少している。
これは、銅の輸入量(生産量)が増えてきていたのか?
それとも錫、鉛の輸入量(生産量)が減少していたのか?
特異なものとしては、
伝鳥取の亜鉛。
大阪神於のアンチモン・ニッケル。
愛知小牧、三重比土東賀柳、静岡和田2号の砒素。
徳島麻植牛島、鳥取中野2号、滋賀鏡山の鉄。
これらについて、他の青銅器との比較したい。

銅鐸類似品の分析表
出土地 亜鉛 アンチモン 砒素 ニッケル
小銅鐸
慶州入室里
51.49 26.10 6.72 1.09 0.90 t 0.55 0.57
馬鐸
大阪青松塚古墳
74.19 18.35 6.00




馬鈴
大阪南塚古墳
72.83 23.44 2.56




馬鐸・大阪青松塚古墳の値は、徳島津峰南方のものに近いが、
他の2例は、明らかに錫の含有量が多い。

銅矛、銅剣の成分表
出土地 亜鉛 アンチモン 砒素 ニッケル
広形銅矛
福岡安徳
76.60 14.13 1.32
4.93
2.93 0.09
細形銅剣
福岡須玖
32.11 61.72 4.29 0.51 0.59 t t t

45.26 39.69 8.61 1.06 0.72 3.74
0.92

63.23 31.37 4.29 0.52 0.59 t t t

銅鐸の成分と北九州の銅剣は明らかに違います。
ここでも錫の含有量が、多いことが大きな違いである。
それに反して銅矛のアンチモン、ニッケルの突出した数値は
大阪神於と共通するものがある。
どちらにしても特異な例である。

朝鮮半島出土 細形銅剣 の成分表
出土地 亜鉛 アンチモン 砒素 ニッケル
伝平壌市 78.09 14.30 8.39




伝平壌付近 75.94 15.08 9.45




伝順川北倉面 73.14 19.77 6.39




70.30 14.84 14.22




ここでも錫の含有量が、多めである。

ここまで、見てみると中国、朝鮮半島、北九州の銅器を
鋳直して、銅鐸にしたのでは?という説が出るのがうなずける。
しかし、錫と鉛は融点に違いが有り、青銅器を射直した場合は
鉛だけが明らかに減少していくことになるのだが、
銅鐸に関してはそのような形は見られない。
これは梅原氏の説が妥当なところになるのでしょう。
(梅原説:意識的に錫の量を減らしていった。)

自分としては大型化していく銅鐸に、使う錫・鉛の量は
小型の銅鐸と同量ぐらいしか使えないため、
銅の量を大型化した分、増量したために錫・鉛の比率が
下がってしまったのではないかと推測します。

銅鐸工場では錫・鉛は、入手が困難なため
かなり貴重なものだったのでしょう。

使用金属元素の融点と沸点

沸点順

砒素    単体(As4) 615℃で昇華する
亜鉛    単体(Zn) 融点:419.5℃ 沸点:907℃
アンチモン単体(Sb) 融点:630.7℃ 沸点:1587℃
鉛     単体(Pd)融点:327℃ 沸点:1751℃
銅     単体(Cu) 融点:1083℃ 沸点:2570℃
スズ    単体(Sn) 融点:232℃ 沸点:2623℃
鉄     単体(Fe) 融点:1535℃ 沸点:2750℃
ニッケル 単体(Ni) 融点:1455℃ 沸点:2920℃


融点順

スズ単体(Sn)    融点:232℃   沸点:2623℃
鉛単体(Pd)     融点:327℃   沸点:1751℃
亜鉛単体(Zn)     融点:419.5℃  沸点:907℃
アンチモン単体(Sb) 融点:630.7℃  沸点:1587℃
銅単体(Cu)      融点:1083℃  沸点:2570℃
ニッケル 単体(Ni)  融点:1455℃  沸点:2920℃
鉄単体(Fe)      融点:1535℃  沸点:2750℃