立石崎の事

今を距(さ)ること六百年前、既に立石の名世に顕はれ、
「士佛参詣記」に、俗にここをば立石と申す也、
大淀浦(おほよどうら)もあたりに近く、伊勢島(いせじま)の方(かた)も
遙かに詠(なが)めるや、南に歩み進むれば、白き砂雪を嘲り、
清き渚の名をあらはし青き波、風漂ひて荒き濱邊の岸を
驚かす云々と載せ。
「勢陽五鈴遺響」に、此の地に至るに、立石茶屋より海崖(うみぎし)に至る処に、
八九尺計の巨石を並べて、詣客の踏みて、潮水の満つる処を踰行(こえゆ)く
飛石(とびいし)あり、潮水多く満つるときは、此の石に激して飛奔(ひほん)す、
故に往事かたし、此処より北に山路あり、是を越て立石崎の垢離(こり)する地に
至るなり云々とありて、古来清絶(せいぜつ)せる垢離掻場(こりかきば)と称せられ、
習俗此の立石崎の潮(しほ)に浴して心身清浄にし、
以て大神宮に参拝する美風(びふう)を伝ふ。
又、此の地に垢離(こり)を掻くこと能(あた)はざる者は、
潮水を竹筒に盛り、或は此の浦の藻鹽草(もしほぐさ)を自宅の浴湯に和して
汚穢(けがれ)を清むる慣行も亦往古(いにしへ)より伝はりて、
立石崎を潔斎(けつさい)の第一霊區(れいく)とせり。


考察

*垢離掻場

所謂、身を清める場所
修験道などでは、滝壺なんかがこんな役目をしているのかな?


【垢離】
○[国]神仏に参詣や祈願するとき、冷水を浴(ア)び心(罪)や体
汚(ケガ)れを洗い落とし清めること。
 「水垢離(ミズゴリ)」とも呼ぶ。
◎水垢離
 垢離を取る:水垢離の行をする。
 垢離を掻(カ)く:水垢離の行をする。
◎語源は「川に降りたって禊(ミソギ)をすること」を意味する「川
降(カワオリ)」から。
 文字は漢語の「離垢(リク)」の連想もあって「垢離」を当てたもの
私立PDD図書館さん
http://www.cnet-ta.ne.jp/p/pddlib/japanese/kofu.htm

*立石崎

海岸・海中に巨石・岩礁が立っているところという名前で使われるのだろう。
読んで字の如く 立っている石の崎

現代の地名では、
福岡県糸島郡志摩町立石崎
長崎県佐世保市浅子町立石崎
共に岩礁でしょう。

福井県敦賀半島の先端に立石岬、ここの灯台が立石崎灯台
立石だけみると日本全国津々浦々ありますが、
長野県諏訪市の上諏訪にも立石町があるのが面白い